「磯村勇斗VS稲垣吾郎」法廷対決の果てに見えた光『ぼくほし』最終回、健治がつかんだ“本当の幸い”と尾碕理事長 の心が溶けた瞬間【ネタバレ・レビュー】

2025.09.22

「磯村勇斗VS稲垣吾郎」法廷対決の果てに見えた光『ぼくほし』最終回、健治がつかんだ“本当の幸い”と尾碕理事長 の心が溶けた瞬間【ネタバレ・レビュー】
磯村勇斗さん主演の月10ドラマ『僕達はまだその星の校則を知らない』(カンテレ・フジテレビ系)が、9月22日放送の第11話でついに最終回を迎えました。スクールロイヤーとして男子校と女子校が合併し、共学となった私立濱ソラリス高校にやってきた弁護士・白鳥健治(磯村勇斗)。
臆病(おくびょう)で、学校に来ると気分が悪くなる状態「ムムス」だった彼が、生徒や教師と向き合う中で成長していく姿は、多くの視聴者の胸を打ちました。
『僕達はまだその星の校則を知らない』第11話(最終回)白鳥健治(磯村勇斗)

『僕達はまだその星の校則を知らない』第11話(最終回)白鳥健治(磯村勇斗)

最終話で描かれたのは、教師・山田美郷(平岩紙)が学校を訴えるという衝撃の展開。健治と理事長・尾碕美佐雄(稲垣吾郎)の全面対決、そして生徒たちが法廷で語る魂の叫び――。物語の集大成となる最終話を振り返ります。

宣戦布告から法廷へ。健治と尾碕、二人の“正義”がぶつかり合う

第10話のラストで、理不尽な担当替えを言い渡された山田先生は、健治に「学校を訴える」と宣言しました。健治は彼女の代理人となり、学校と戦うことを決意します。
『僕達はまだその星の校則を知らない』第11話(最終回)尾碕美佐雄(稲垣吾郎)

『僕達はまだその星の校則を知らない』第11話(最終回)尾碕美佐雄(稲垣吾郎)

その動きを知った理事長・尾碕は、健治を屋上に呼び出します。小学生の時、独学で法律を学び学校を訴えようとした健治。尾碕はそれが原因で教師である父・誠司(光石研)が、僻地(へきち)へ異動させられた過去に触れ、「訴えるのは楽しいか」と健治をなじります。理想の教育を実現しようとしながらも、がんじがらめの現実にいら立つ尾碕。しかし、健治はもう怯(おび)えません。
「訴えるのは脅したいというより、本音でぶつかりたいからじゃないでしょうか」
かつての臆病な姿はそこになく、力強い瞳で尾碕に法廷での対決を提案する健治。彼の成長が、物語を大きく動かす瞬間でした。

涙の証言リレー。生徒たちが自分の言葉で伝えたかった想い

『僕達はまだその星の校則を知らない』第11話(最終回)左から)山田美郷(平岩紙)、白鳥健治(磯村勇斗)

証人尋問当日。法廷には、健治や尾碕だけでなく、多くの生徒や卒業生たちが集まりました。そして、証言台に立ったのは生徒たち自身でした。
山田先生が何があっても絶対守るって言ってくれて、とても心強かった」
「このまま山田先生が辞めることになったら、マジ一生学校を恨む」

「学校には、先生を大事にしてほしいし、見合う報酬(ほうしゅう)を支払ってほしい」
これまで健治が向き合ってきた生徒たちが、自分の言葉で、学校への愛、そして山田先生への感謝を語ります。その声を聞き目頭が熱くなる山田。それは、学校をただの箱ではなく、自分たちの「居場所」だと訴える魂の叫びでした。

「後悔していました」理事長・尾碕が初めて見せた本音

生徒たちの真摯な証言は、被告席に座る尾碕の心をもゆさぶります。健治からの反対尋問で、彼は初めて自らの過去と本音を吐露(とろ)しました。
良い大学、良い企業という価値観に縛られて生きてきたこと。しかし、本当は主体性を持った人間を育てたいと教師になったこと。そして、親に求められて理事長になったことを「後悔していました」と。
しかし、生徒たちの言葉を聞き、「この道でよかったと、初めて心から思うことができました」と語った尾崎。彼の瞳には、長年の苦悩から解放されたような光が宿っていました。

『僕達はまだその星の校則を知らない』第11話(最終回)左から)白鳥健治(磯村勇斗)、父・誠司(光石研)

父との雪解け、そして珠々へ…健治が掴(つか)んだ“本当の幸い”

法廷での戦いと並行して、健治のプライベートにも大きな変化が訪れます。定年退職した父・誠司との長年の確執。ぎこちないながらも、お互いが素直に言葉を交わすことで、父子の時間はついに雪解けを迎えます。「こうやって話せば良かったんだ」と微笑む父の姿。自己に投影する視聴者もいらっしゃるかもしれません。
そして、裁判が終わるまで会うことを控えていた国語教師の幸田珠々(堀田真由)との関係。天文部の観測会に招かれた健治は、星空の下、まっすぐに想いを伝えます。
「結婚しましょう」 「あなたのそばにいることが、僕の幸いだから」
驚きながらも、その言葉に喜びを隠せない珠々。不器用だった健治が、ようやく見つけた「本当の幸い」。それは、誰かの隣で、誰かと共に生きていくことでした。

『僕達はまだその星の校則を知らない』第11話(最終回)左から)白鳥健治(磯村勇斗)、幸田珠々(堀田真由)

一冊の文学作品を読み終えたような感動

裁判は「和解」という形で幕を閉じ、山田先生は教壇に戻り、尾碕は生徒と直接向き合う理事長へと変わりました。濱ソラリス高校という生命体は、痛みの中から新たな一歩を踏み出したのです。

全編を通して散りばめられた宮沢賢治の言葉のように、このドラマはまるで一冊の文学作品を読んでいるかのような深い余韻を残してくれました。
健治と私立濱ソラリス高校の物語を観れなくなるのが本当に寂しいです。生徒や教師陣、健治と珠々のその後のなど、まだまだ観たいエピソードがたくさんあります。

全11話、心温まるドラマをありがとうございました。
『僕達はまだその星の校則を知らない』第11話(最終回)

『僕達はまだその星の校則を知らない』第11話(最終回)

取材・文:宅野美穂
都内在住のライター。主に、インタビュー記事を執筆。本とゲームと音楽が好き。
miyoka
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