倍速で知識を得る高校生が知らなかった“ろくぶて”。鬼塚英吉(反町隆史)がドラマ『GTO』第6話で伝えた、無駄と寄り道の価値

倍速で知識を得る高校生が知らなかった“ろくぶて”。鬼塚英吉(反町隆史)がドラマ『GTO』第6話で伝えた、無駄と寄り道の価値
中盤に差し掛かったドラマ『GTO』(毎週月曜 午後10:00~/カンテレ・フジテレビ系全国ネット)。その第6話が8月24日に放送されました。
第5話では、1年B組の生徒・田中航(及川桃利)が「うちの学校にいても楽しくないし、時間の無駄」という理由で退学を申し出ます。ただ、退学を決めた背景には、家庭内の厳しい経済状況がありました。担任の鬼塚英吉(反町隆史)は、退学を思いとどまらせるために様々な提案を実行。抱え込んでいた感情を鬼塚にぶつけた航は、もう一度、私立誠進学園の生徒として再出発することを決意しました。

クラスの雰囲気は着実に変化していますが、一方で1年B組のチャットには鬼塚を敵視する内容が書き込まれ続けます。そんな中、第6話ではクラスきっての秀才・福田樹(柴崎楓雅)が「担任を替えてほしい」と大久保校長(宇梶剛士)、中丸教頭(近藤芳正)に直談判。樹は、担任交代についてクラス全員の多数決をとりたいと言い出します。
『GTO』第6話 柴崎楓雅

『GTO』第6話 柴崎楓雅

ネット未発達の時代、どのように情報を得ていた?

私たちの生活は、タイパ(タイムパフォーマンス)を意識した日常が当たり前になりました。分からないことがあっても、AIに相談すれば、的確と思われる答えを素早く手にすることができるようになりました。数十年前では考えられない生活です。

インターネットが発達する前は、分からないことがあれば誰かに聞くか、テレビ番組や書籍、新聞などを片っ端から調べる“自力作戦”しかありませんでした。たとえば筆者は小中学生時代、チラッと聞いた楽曲のCDが欲しくても情報を得るための手段が少なすぎたため、CDショップへ行ってチャートコーナーをじっくり見て、曲名やジャケット写真の雰囲気に賭けて買うしかありませんでした。

特に大変だったのが洋楽。邦楽なら音楽チャートのテレビ番組をチェックすればある程度の情報を手に入れることができましたが、洋楽はほぼゼロ。しかも当時住んでいた町はかなりの田舎で、洋楽情報が得られるラジオ番組の電波は届かず、書店には音楽雑誌もありません。このため、欲しい洋楽のCDは“勘”を頼りに手に入れていたのです。
今思い返すと、曲名の情報一つを手に入れるだけでも、かなりの手間をかけていました。しかも都会と田舎では、得られる情報にも大きな差がありました。それだけの手間をかけたところで、目当てのものを正しく手に入れられるかどうかは不確かだったのです。

本来の目的と異なるものを手に入れることも多かったのですが、“間違って手に入れたもの”から得られる知識や情報も多数あるのも事実。筆者は小さいときから映画や音楽が大好きだったので、“間違って手に入れたもの”であっても、“意外性のあるおもしろさ”を感じ、そのときの経験が現在まで生かされています。
『GTO』第6話 柴崎楓雅

『GTO』第6話 柴崎楓雅

第6話では鬼塚が、樹に「最近の若いやつって、雑談ができなくなってるんだってな?」と問いかける場面があります。そんな雑談の材料になるものの一つが、こうした手間や寄り道の中で偶然手にした知識や情報、そこから得られる“意外性のあるおもしろさ”なのだと筆者は感じます。
『GTO』第6話 柴崎楓雅、反町隆史

『GTO』第6話 柴崎楓雅、反町隆史

“ろくぶて”は人生において重要な知識ではないけど…

樹は、ネット動画の講義を見ながら勉強していますが、その動画も倍速で視聴。2倍のスピードでその動画を見聞きします。得られる情報量に個人差はもちろんありますが、単純計算では、標準速度の倍のスピードで知識が得られ、その分、学習量を増やすこともできます。樹は、自分が求めていない情報をすばやく排除し、必要なものだけを得ようとします。

そのため、鬼塚の「これ知ってるか?“手袋って逆から言ってみて”ってやつ。懐かしくない?」という“お遊び”も、樹は「知らない」と言い、逆から言って6回ぶたれると「何ですかそれ、くだらない」とあきれるのです。樹がこれまで倍速で得てきた知識の中に、“ろくぶて”はなかったのでしょう。確かに人生において必要ないと思われる情報です。ただ、人と人との関係は、必ずしも“必要な情報”だけで作られるわけではありません。

無駄や手間を省略し、倍速で得る知識が悪いとはまったく思いません。むしろ恩恵の方が多いと思います。一方で副担任の柏原実央(生見愛瑠)は、無駄話が多い鬼塚について「もしかして、私たちの方が立ち止まって考えようとしないで、焦って結果ばかり欲しがってるだけなんじゃ」「最近本で読んだけど、何か難しい問題があったとき、解決策を見つけるより、もっと大事なことがあるらしいよ」と口にします。その大事なことの一つが、もしかすると“時間をかけること”なのかもしれません。
『GTO』第6話 生見愛瑠

『GTO』第6話 生見愛瑠

樹は、一度は1年B組から別クラスへ移ります。ただ最後に、1年B組に戻ります。その復帰の場面、鬼塚は「5、4、3、2、1」とカウントダウンをして樹が戻ってくるのを待ちます。しかし「0」になっても樹は教室には入ってきません。前夜に起きたある出来事で疲れ果て、教室の前で眠りこけていたのです。時間通りでなくてもいい。最短距離でたどり着かなくてもいい。そんな“遅れ”や“寄り道”もまた、人が何かを得るために必要なのだと教えてくれているようでした。
文:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
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