大阪・関西万博(大阪市・夢洲)のオランダパビリオンのカフェでおにぎりが販売されているのをご存じでしょうか?
大阪の老舗のり専業メーカー・ニコニコのり株式会社(大阪市浪速区)が、今回のEXPO2025大阪・関西万博に向けて2022年から大阪芸術大学の学生と立ち上げた「世界のおにぎり」プロジェクト。
この「世界のおにぎり」は、各国の料理や食材の特徴を生かした“おにぎり”を製品化。万博の会期中、約1か月ごとに国を変えて4か国のおにぎりがORA外食パビリオン「宴~UTAGE~」内の象印マホービンが展開するおにぎり専門店「ONIGIRI WOW」で販売されています。オランダパビリオンで販売中のおにぎりは5月14日から6月10日まで販売された中の一つでした。
プロジェクトで開発されたオランダのおにぎりは、現地の伝統食でもある「ヒュッツポット」と「ビターバレン」を具材にしたものです。
「ヒュッツポット」はオランダの家庭料理でニンジン入りのマッシュポテト。「ビターバレン」はオランダの定番料理でミートボールサイズのコロッケのようなものです。
これら2つのオランダ料理をおにぎりにするにあたっては在大阪オランダ王国総領事のMarc Kuipers(マーク・カウパース)さんが深くかかわっていると聞き、お話を伺いました。
―オランダおにぎりにどう関わったのですか?
ニコニコのりさんと「オランダおにぎり」を作るにあたって、食べものにまつわる思い出やストーリーを共有することを大切にしました。
私は、食事の体験と感情とは深くつながっていると考えています。例えば子どもの時の思い出ですが、オランダの冬は湖や池が凍るほど寒く、氷上でアイススケートを楽しんで家に帰ったら、お母さんがグレイビーソース(肉汁から作るソース)がたっぷりかかったヒュッツポットを作って待っていてくれました。そのことがうれしい記憶として心の中に残っています。
ビターバレンは、オランダ語で「ヘゼリヒ(Gezellig)」といって、「居心地が良い、心温まるような」時間を楽しむときに必ず頼む定番料理です。大人になって親しい人たちとビールを飲みながら楽しい時間を過ごす時に欠かせないものなんです。
このように、食事はこれまでの時間を共に過ごした人との思い出を紡ぐものだと思っています。
そういった食にまつわる思い出を伝えながら、どうやってオランダと日本の定番料理をマッチさせるのか。
フィードバックしながらみんなで完成させました。
―味に関してはどうでしょうか?
ヒュッツポットはニンジンと玉ねぎが重要です。それらの甘味が大切で、その配分に気を使いました。そしてグレイビーソースの風味をいかに出すのかにもこだわりました。
ビターバレンはコロッケなのでサクサクとした食感を楽しむものですが、それをどうやっておにぎりの具として表現しようかと…。試食を重ねて、最終的にはパン粉を使って食感を再現することにたどり着きました。
また、オランダの企業が作るプラントベースミート(代替肉)を使いましたが、全く違和感のないものに仕上がりました。
おにぎりを通じてオランダの代替肉のレベルが高いこともアピールしたかったのです。
オランダおにぎりは当初、成功するかどうかわからなかったのですが、ニコニコのりさんをはじめとするパートナーと協力して取り組むことで、このプロセスが「共に分かち合い新しい価値観を生み出す」という、オランダパビリオンのテーマ「コモングラウンド」を体現するものだったと思っています。
単にオランダと日本の食を持ち寄って一つにするのではなく、一緒に取り組み、コラボしながら素晴らしいものに作り上げていく、この体験こそが大切なのです。
今回のプロジェクトはおにぎりですが、この経験は食糧問題や気候変動など、より大きくグローバルな課題解決にもつながっていくと信じています。
ニコニコのりの社員でこのプロジェクトリーダーの戸田佳織さんは、「学生さんたちとオランダの料理をおにぎりにすると決めてから、総領事の食にまつわる思い出を聞き、オランダの最先端技術を用いた具材を使って、試食を重ねながら約1年かけて完成させました」と感慨もひとしお。
近年、持続可能な食料生産の実現に向け、「代替たんぱく質」の取り組みを強化しているオランダ。
オランダおにぎり2品はいずれも調味料に至るまで動物性食材を一切使用せず、本場の味を再現し、ベジタリアンやヴィーガンなど食に制限のある人も楽しむことができます。
どちらも1つ650円(税込)で、オランダパビリオン内1階カフェで販売中。
オーダーしてから巻くのりは「世界のおにぎり」用に選定されたプレミアムのり「極(きわみ)®」を使用。
パリパリとした食感を楽しんでほしいというニコニコのりのこだわりです。
おにぎり専門店「ONIGIRI WOW」では、7月16日(水)から8月19日(火)までアメリカ(チリコンカン)、ペルー(ロモサルタード)、チュニジア(オジャ)、インド(ダルマカニ)を、8月20日(水)から9月16日(火)までオーストラリア(ミートパイ)、ベトナム(コムスン)、イタリア(カチャトーラ)、フランス(鴨のリエット)を、9月17日(水)から10月13日(月・祝)までベルギー(カルボナード)、サウジアラビア(シャクシューカ)、トルコ(サチカブルマ)、スペイン(タコのガリシア)を販売予定です。
こちらもあわせてご賞味ください。
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