​​圧巻の映像で魅せる、カンテレの報道カメラマン・樋口耕平「誰でもスマホで撮れる時代、何を伝えたいか問われる」(後編)​

カンテレ報道映像部の樋口耕平さん

カンテレ報道映像部の樋口耕平さん

​​カンテレの報道カメラマンとして、多くのドキュメンタリー作品を手掛けてきた報道映像部の樋口耕平さん(51)。その撮影術はテレビの枠組みを超え『ニューヨークフェスティバル 撮影部門金賞』をはじめとする数々の栄誉に輝いてきました。
​​Vol.1となる前編では、カンテレ入社からの報道カメラマンへの歩み、東京五輪・銀メダリストの清水希容さんとの信頼関係、他局のカメラマンが驚いたドキュメント撮影などについてお聞きしました。​
​​後半は、樋口カメラマンのルーツに迫るとともに、カンテレが推進している超高精細映像制作チーム「UHD-works」の活動、そして、報道カメラマンにとってもっとも大切にしていることなどについて語っていただきました。

◆​​MTVで刷り込まれた、撮影ギミック​

​​──樋口さんの撮影のルーツというか、影響はどこにあると思われますか?
​​学生時代から映像を撮っていたわけじゃないんですが、自分のキャリアになにか資する経験があったとしたら、音楽がすごく好きなことでしょうか。それで中・高・大学と、「MTV」(音楽専門チャンネル)をめちゃくちゃ観ていたんです。
​​──樋口さんが青春を過ごした80〜90年代は、「MTV」の全盛期でしたね。
​​兄の影響で観たデュラン・デュランの作品や、マイケル・ジャクソンの『スリラー』とかも記憶に残っていますが、一番観たのはメタリカというバンドの『One』という曲のビデオです。
​​監督・撮影はビル・ポープという後に映画『マトリックス』シリーズを撮ったカメラマンですが、当時は映像がどうこうに興味はなくそのバンドが大好きで。ビデオテープが擦り切れるまで観ていました。まさに巻き戻しできなくなるほど(笑)。​
​​なので​​、​​カット割りも完ぺきに覚えています。生まれ持った才能やセンスじゃなくて、そういうことが地味に影響しているのかなと。入社後ある先輩にそう指摘されて、なるほどと。あとはデヴィッド・フィンチャーとかスパイク・ジョーンズのMVもよく観ました。
超高精細映像制作チーム「UHD-works」でも活躍する樋口カメラマン

超高精細映像制作チーム「UHD-works」でも活躍する樋口カメラマン

​​──いずれも時代を代表する映像作家で、当時のMVはまさに宣伝のための映像から芸術的なショートフィルムに進化した時期でした。
​​そうですね。MVって、ギミック(仕掛け)も多いじゃないですか。それこそ、スパイク・ジョーンズが逆回しで全部撮ったりとか。だから、ドキュメンタリーやニュースの特集でも、素直に撮るだけじゃなく何か趣向を凝らしたいとは常に思ってきました。もちろん必要性や意味合いを考えた上で。
​​そういえば、映画『マトリックス』の主人公が弾丸を避けるシーンで有名な、タイムスライス撮影(たくさんのカメラを並べて同時撮影し、時間が止まったまま視点がぐるりと回り込むような映像)があるじゃないですか。あれで「阿波おどり」を撮れないかと。阿波おどりってめちゃくちゃカッコいいなと思っていて、あの手や足の動きをダイナミックに表現したいと​。
​​でも、僕が撮るのは実際の阿波おどり会場での本番なので、大掛かりにはできない。なので小型カメラのGoProを10台くらい丸く並べるための板を自作して、それを手で持って撮ったこともありました。ニュース用映像で。そんなことばっかりやっていましたね。
​​──ある種、執着的なまでの樋口さんの撮影は、そんな背景があったんですね。執着と言うと、言葉は悪いですが。
​​いやいや、執着ですね。まず人がやらないようなことやろうと思って撮ってきたので。若い頃から現場に行って、絶対に他の人が撮らないようなカットを残すことを自分に課してたんですよ。​
​​その想いは、カメラマンになった当初から強かったですね。 ただ繰り返しになりますが、大事なのはそれで何を表現したいか。僕より面白い映像を作る人はゴマンといますから。僕自身は「面白い」と言われる以上に「なるほど」と思わせたいです。

◆​​カンテレ技術スタッフによる超高精細映像制作チーム「UHD-works」​

​​樋口さんは現在、カンテレが推進している超高精細映像制作チーム「UHD-works」のメンバーとしても活動中。4K、8K、さらには12Kといった次世代の高解像度・HDR(ハイダイナミックレンジ)技術を駆使し、ドラマ作品も撮影するなど新たな映像の可能性を模索しています。
​​その「UHD-works」でタッグを組むのが、演出・脚本・プロデュース・編集などを担う矢野数馬さん。編集などポストプロダクション技術にスポットを当てた『JPPA AWARDS』で5年連続優秀賞を獲得するなど、カンテレを代表する編集マンとして業界内では知る人ぞ知る存在です。
超高精細映像制作チーム「UHD-works」による撮影の様子

超高精細映像制作チーム「UHD-works」による撮影の様子

​​──樋口さん同様、数々の受賞歴を誇る矢野さんですが、同じ会社にいながら接点がなかったとお聞きしました。
​​そうなんです。矢野さんはドラマやバラエティーなんかを主に担当する制作技術セクションの人なので、報道の僕との接点は全くなかったです。東京で行われた授賞式でたまたま一緒になって、なんか面白いことができたらいいですね、みたいな話はしていたんですよ。そのときは全然、具体的なことはなにも決まっていなくて。
​​その後、『京の摺師』が終わった時、HDR(明るい部分と暗い部分をより広く、肉眼で見たようにきれいに表現できる)技術を使って何か作れないか、と会社に言われて。それで新たに企画を考えたんですが、監督と撮影は僕が自分でやるとして、その先が難しい。悩んでいたら「俺、手伝えるよ」みたいな連絡を矢野さんからもらって。それが『3人のヤマトナデシコ~ただ勝利のためでなく~』だったんです。

『3人のヤマトナデシコ~ただ勝利のためでなく~』(清水希容・飯端美樹・武知実波)Trailer [4K]
​​──矢野さんとのコンビは、新しい刺激になりましたか?
​​そうですね、映像に対しての波長や感覚が近いのかなと思います。作家的というか、視覚的なスタイルを大事に作っていくタイプで、カメラマンとしては掻(か)き立てられるしありがたいです。撮影した映像を最大限生かそうとしてくれるのは、作品を見たら分かりますので。そんな話、本人とはしたことないですけど(笑)​。
​​『ヤマトナデシコ』は、矢野さんにとってもいろんな挑戦があった作品だと思いますし、僕も楽しかったです。その後も「UHD-works」でやる仕事は、特殊というか、あえてチャレンジングで困難なことをやっていこうと。放送だけを目的にしているわけではなく。
​​──進化し続ける技術への追求といったところですか。
​​そうですね。新しい技術の検証や習得も我々の大きなテーマなので。機材は進化し続けていくし、撮影はもちろんのこと、編集も照明も音声もカラーグレーディング(色調演出色補正)の技法も刻々と変化していきますよね。アンテナを巡らせてその知識を得たりスキルを磨くことは、ものづくりを続ける上で不可欠だと思います。
​​──今後はどういう活動を考えていますか?​
​​秋ごろになりますが、我々にとってこれまでにない大きなプロジェクトを画策していまして、今まさに準備中です。​
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