聞いてみよか

書店の危機、小学生が救う⁉【さゆり’s eye】

2024.10.04

書店の危機、小学生が救う⁉【さゆり’s eye】

書店の危機、小学生が救う⁉

こんにちは。報道センターで解説デスクをしています加藤さゆりです。

地域で愛される「街の本屋さん」が、いま全国で姿を消しつつあります。
経済産業省によると、全国の書店の数は20年前の約6割程度にまで減少。
週刊誌やコミックなどが紙から電子版へと代わってきたことが、中小書店の経営を圧迫してきたと考えられています。
書店に並んだ本との偶然の出会いは、オンライン上ではなかなか得難い体験の一つ。
街の本屋さんの生き残りを願うなか、興味深い取り組みをしている小学校があると聞いて取材させていただきました。
大阪教育大附属天王寺小学校。
6年生の生徒たちが国語の授業で取り組んでいるのは、「宮沢賢治作品の魅力を伝えよう!プロジェクト」。
ただ本を読んで授業で発表するだけではありません。
およそ3カ月をかけて、街の本屋さんと協働し、本の広告活動までやってしまおうという壮大な取り組みです。
生徒たちはそれぞれが推しの宮沢賢治作品を選び、作品の説明やセールスポイントなどを書いたポップ(広告)を作成します。それを置いてくれる本屋さんは自分たちで探し、交渉するのも授業の一環です。
実はここがこのプロジェクトのポイントでもあり、書店で働く人との交流、そして自分たちで契約を取ってくるという経験が「キャリア教育」にもつながっています。
さらに、手作りのポップは、実際に書店でお客さんの目に触れるものなので、効果的なキャッチコピーやデザインとなるように、授業にはプロのコピーライターやイラストレーターを招いて手ほどきを受ける徹底ぶりです。
9月下旬、生徒たちのポップが出来上がったと聞き、授業にお邪魔しました。
切り絵で夜汽車を表現し「銀河鉄道の夜」のポップを作った生徒、紙に糸を張って立体的にチェロを作り「セロ弾きのゴーシュ」を推薦する生徒。
それぞれが様々な工夫を凝らして推し作品をアピールしますが、どれも思いの詰まった見事な広告作品でした。
「心を込めてつくりました!」「絶対に本を買わせます!」そんな言葉を添えて書店に持っていくそうです。
授業を企画した国語科目担当の大久保亨先生に伺うと、今回の授業で初めて街の本屋さんの存在を知ったという生徒もいたそうです。
また、隠れた宮沢賢治作品を生徒から教えられたこともあり、書店での広告活動という「社会参画」を通して、生徒たちの成長を実感されたそうです。
こうした取り組みを通して、「社会も教育に目を向けるきっかけになってほしい」と大久保先生は話していました。
生徒たちの広告作品は、10月以降、阿倍野や天王寺、梅田、八尾、堺など、大阪府内の様々な書店で特別展示スペースを設けて、宮沢賢治作品とともに10月末ごろまで掲示されます。
生徒たちが一生懸命に描いた手作りポップを見かけたら、私も本を手に取りたくなりそうです。
もし街の本屋さんで見かけられたら、ぜひ足を止めてご覧になってくださいね。
miyoka
0