食べてみよか

「大根と豚バラ肉の甘辛煮」わかぎゑふの料理コラム✨

2025.03.02

「大根と豚バラ肉の甘辛煮」わかぎゑふの料理コラム✨

浮かれ気分?

 今、芝居の本番中です。大阪公演が先にあり、名古屋、東京と続いていきます。ツアーというほど大層なものではありませんが、大阪以外の土地に行く場合はとても気を使います。
 というのも、うちの劇団は昔たいへんな目に遭ったことがあるからです。あれは2001年の冬の公演でした。忘れもしません2月のことです。広島公演が1日だけあって、その次の日にバスで九州へ移動というスケジュールでした。広島には劇場でのリハーサルもあり、公演の前日に行きました。つまり広島に2日間居て、3日目の朝にバスで九州に向かったのです。

 さて地方公演に行く楽しみのひとつは「ご当地グルメ」です。広島と言えばカキ!とみんな思いました。しかし私たちは主催者側なのでもしもあたったら?という怖さから鉄板焼きで1つずつ食べただけでした。カキにあたると嘔吐(おうと)、下痢などの症状が出て大変なことになるので、そこは俳優たちも避けたようです。
 で、本番を迎えて無事に広島公演が終わり3日目の朝からバスに乗って九州へ向かったのですが…インターで休憩があるたびに飛び出すように走っていくメンバーが数人目に付くようになりました。バスの中を見回すと気分の悪そうな人もチラホラいるではありませんか!
 「昨日何食べたの?」と聞いてみると「広島焼です」とか「昨日はラーメン屋に行きました」という答え。「カキじゃないんだ。じゃあなんでこんなにたくさんのメンバーがトイレに駆け込んでるの?」と頭をひねっていたら…。

 衣装部の女の子が「あそこのマスターの言ってたこと本当やったんや」とつぶやきました。聞いてみると広島に着いた日の夜に、スタッフ、俳優20人くらいでホテルで紹介してもらったカキ料理のお店に行ったそうです。そこのマスターが「カキは36時間後にあたるものだ」と言ったとか。
 広島に着いた日の夜にカキを食べた彼らは、次の日の本番を終え、そして翌朝の移動中に気分が悪くなった。そうです!ピッタリ36時間後に症状が出たわけです。「めっちゃ当たってるやん!」と感心してる場合ではありませんでした。
 今のように携帯電話でなんでも調べられるという時代ではないので、九州の劇場のスタッフさんにホテルの近くの病院を紹介してもらい、バスの中から電話をかけて予約をし、気分の悪くなったメンバーをなるべく前の席に移動させて、運転手さんに事情を言って頻繁にインターで止まってもらうようにお願いしてと元気な私たちは大忙しでした。
 そして福岡に着くと、とりあえずみんなをホテルで寝かせて、歩けるメンバーを内科に連れて行きました。それを繰り返して12人がカキ中毒という結果が出て、下痢のひどい人は点滴を打ってもらって、やっとおさまったのでした。一過性のものなので九州公演に支障はありませんでしたが、総勢30名中12人がやられるという結果。しかも俳優に数人、照明、音響、衣装、道具さんと満遍なくあたったので、もしも九州公演が一日早かったら公演中止になっていた可能性もありました。
 そんな事件があったのでうちの劇団はいまだに「本番中は生ものを食べること禁止令」があります。ずいぶん昔のことなのでみんな巻きずし程度は食べてますが、大っぴらにお刺身を食べるようなことはありません。君子危うきに近寄らずというところでしょうか。

 ところであの事件の時に音響のスタッフが下痢でヘロヘロになりながら「本当にすんません。ご迷惑おかけしました」と謝りながら「でも…おいしかってん」と言い放った時、大阪人って食には貪欲やなぁと感心したものです。
 演劇人だって人間です。仕事で行くとはいえ地方公演の楽しみを奪うことはできません。まぁ次は名古屋と東京なので生ものにあたることはないと思いますが、一応「生もの禁止令」をもう一度発布しておこうと思っています。

そんなことで、生ものを避けておいしい煮物のご紹介をしたいと思います。
これはネットで見てなるほどと思った「大根と豚バラ肉の甘辛煮」です。
【大根と豚バラ肉の甘辛煮の作り方】

(材料)
・豚バラ肉 200~300グラム
・大根 2分の1本
・酒 大さじ2
・しょうゆ 大さじ2
・はちみつ 大さじ2(なければみりんで代用)
・鶏がらスープのもと
・ごま油
・水200cc
・お好みで輪切りのタカの爪少々

(作り方)
①大根は縦に半分に切ってスライサーで薄切りにします。
②豚バラ肉を食べやすい大きさに切って、ごま油で炒めます。
③調味料を合わせて入れて、水を加えてひと煮立ちします。
④スライスした大根を加えてフタをして中火で5分ほど煮込んだら出来上がり。
★大根が薄いので火がすぐに通り、あっという間に味がしみます。味見の段階でしょうゆ、甘みはお好みに調整してください。仕上げにかいわれ大根を散らしてのせてもおいしいです。
わかぎ ゑふ(劇作家・演出家)大阪府出身。
関西小劇場界の老舗劇団、「リリパットアーミーII」2代目座長。
芝居制作処、玉造小劇店の代表。
大阪弁のオリジナル人情劇を数多く手掛けている。古典への造詣の深さも有名で
落語、歌舞伎、新作狂言の作、演出や衣裳デザインなども手掛ける。
小劇場から大劇場まで縦横無尽に活躍する数少ない女性演出家の一人。
エッセイも多数出版。2023年には大阪市民表彰を受賞した。
miyoka
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